インボイス制度(適格請求書等保存方式)には、免税事業者など適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置がある。スケジュールは次のとおり確定している。
| 期間 | 控除できる割合 |
|—|—|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 仕入税額相当額の**80%** |
| 2026年10月1日〜2029年9月30日 | 仕入税額相当額の**50%** |
| 2029年10月1日〜 | 控除不可(0%) |
つまり本記事執筆時点(2026年7月)から**3か月弱で控除率が半減**する。免税事業者との取引が多い会社ほど消費税負担が目に見えて増えるため、この夏が実務対応の締切だ。(出典:国税庁 [インボイス制度特設サイト](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm))
## 影響額のイメージ
免税事業者への外注費が月110万円(税込・消費税相当10万円)ある会社の場合:
– 2026年9月まで: 10万円×80%=8万円/月を仕入税額控除できる
– 2026年10月から: 10万円×50%=5万円/月に減少 → **月3万円・年36万円 of 負担増**
外注が多い建設・IT・制作・運送などの業種では、影響が年間数百万円規模になることも珍しくない。
## 経理が今やるべき4ステップ
### ステップ1: 免税取引先の棚卸し(7月中)
仕入先・外注先を「適格請求書発行事業者か否か」で仕分けし、免税事業者への年間支払額と消費税相当額を一覧化する。会計ソフト上で経過措置(80%)の税区分を使っている取引を抽出すれば、対象リストは機械的に作れる。freee・MF・弥生とも経過措置用の税区分での集計が可能だ。
### ステップ2: 取引先との協議(8〜9月)
選択肢は実務上3つある。
1. **課税転換の打診**: 取引先がインボイス登録すれば控除は満額に戻る。ただし相手の税負担が増えるため、単価調整とセットの協議になる。
2. **価格の再交渉**: 控除減少分(税相当額の30%ポイント分)をどちらがどれだけ負担するかを話し合う。**一方的な減額通知は下請法・独禁法(優越的地位の濫用)のリスクがある**ため、必ず協議の形を取り、記録を残す。
3. **現状維持**: 少額・代替不能な取引先は、負担増を織り込んで継続する判断もある。
### ステップ3: 会計ソフトの税区分を確認(9月)
2026年10月1日以降の仕入れから、経過措置の控除割合が80%→50%に変わる。クラウド会計3社([freee会計](/freee-kaikei-review/)や、マネーフォワード クラウド会計(順次公開予定)、弥生会計)は制度日程に沿って税区分・自動計算を更新するのが通例だが、次の点は自社で確認したい。
– 10月1日をまたぐ請求(9月納品・10月請求など)の計上日と適用割合の整合
– 自動仕訳ルールに旧税区分が固定されていないか
– 期またぎの前払・未払計上の処理
### ステップ4: 資金繰りと予算への反映
控除減少は納税額の増加としてキャッシュに直撃する。年間影響額を算出し、消費税の中間納付・期末納税の資金計画へ反映しておく。
## 少額特例・簡易課税との関係
– **少額特例**(税込1万円未満の課税仕入れは帳簿のみで控除可)は、基準期間の課税売上高1億円以下等の事業者について2029年9月30日まで使える。小口経費はこの特例で影響が緩和される。
– **簡易課税・2割特例**を適用している場合、仕入側の控除計算に経過措置は関係しない(みなし仕入率で計算するため)。自社の課税方式を先に確認してほしい。
## FAQ
**Q1. 免税事業者への支払を消費税分だけ一方的に減額してよいか。**
不可だ。優越的地位の濫用・下請法違反となるおそれが公取委から明示されている。協議のうえ合意し、書面を残すこと。
**Q2. 80%と50%の境目はいつの取引か。**
原則として課税仕入れを行った日(役務提供完了日・引渡日)が2026年9月30日までなら80%、10月1日以降なら50%だ。請求書の日付ではなく取引日で判定する。
**Q3. 経過措置の適用に必要な帳簿記載は。**
区分記載請求書と同等の事項が記載された請求書等の保存に加え、帳簿に「80%控除対象」など経過措置適用の旨を記載する。会計ソフトの経過措置用税区分を使えば自動で満たせる。
**Q4. インボイス対応と電子帳簿保存法対応は別物か。**
別制度だが実務は一体だ。受領インボイスの保存はほぼ電子化するため、電子帳簿保存法ガイド(順次公開予定)と合わせて体制を作るのが効率的だ。
## まとめ
経過措置の80%期間は2026年9月30日で終わる。①免税取引先の棚卸し ②協議と価格調整 ③会計ソフトの税区分確認 ④資金計画への反映——この4つを夏の間に済ませれば、10月の切替は事務作業で終わる。会計ソフト側の対応力も選定基準のひとつであり、3社の比較は [クラウド会計ソフトおすすめ比較](/cloud-accounting-compare/) を参照してほしい。
※本記事は2026年7月9日時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断は税理士・所轄税務署に確認してほしい。


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