クラウド会計の解約でデータがどうなるかは3社で違います。弥生は契約終了日以降、参照もできません。freeeは支払いを止めると1か月より古い取引が非表示になり、事業所削除で全データが消えます。マネーフォワードは解約しても仕訳は残ります。法人の帳簿保存義務は原則7年です。

目次 [ close ]
  1. 結論:解約を決めたら、先にこの5点を手元に落とす
  2. 3社のデータ保存ポリシーを同じ観点で並べる
  3. 電子帳簿保存法の保存義務と、SaaS解約が作る空白
    1. 電子取引データは「電子のまま」保存する必要がある
  4. freee会計を解約する場合の実際
    1. 支払いを止めただけでも、見える範囲は狭まる
    2. 実務上の段取り
  5. マネーフォワード クラウド会計を利用終了する場合の実際
    1. ただし「削除されない」と「使える」は別
  6. 弥生のクラウドサービスを解約する場合の実際
    1. 契約終了日という期限が明確な分、段取りは立てやすい
    2. デスクトップ製品との違いに注意
  7. 乗り換え先へ引き継げるもの・引き継げないもの
    1. 比較的引き継ぎやすいもの
    2. 引き継げない、または大きく劣化するもの
  8. 出力したデータをどこに、どう保管するか
    1. 保存先は2か所以上に分ける
    2. 電子取引データは検索できる形で並べる
    3. 担当者が代わっても分かる状態にする
  9. 解約のタイミングをいつにするか
    1. 決算確定後が最も安全
    2. 期中解約は突合の手間が跳ね上がる
    3. 更新月から逆算する
    4. 並行運用の期間を作るかどうか
  10. 解約前チェックリスト
    1. 出力する(契約有効期間中)
    2. 検証する
    3. 保管する
    4. 解約手続きに入る
  11. よくある疑問
    1. 解約後に税務調査が来たらどうなりますか
    2. 会計事務所が別のソフトを使っている場合の保存義務の所在
    3. 一部の機能だけ解約することはできますか
    4. データを出力する時間が取れない場合はどうすればいいですか
    5. 解約を先延ばしにして、契約だけ最低プランで維持する選択はどうですか
  12. まとめ

結論:解約を決めたら、先にこの5点を手元に落とす

どのサービスを使っていても、解約手続きに入る前に紙かローカルファイルとして確保しておくべきものは共通しています。順番に挙げます。

  1. 仕訳帳と総勘定元帳(対象期間すべて/CSVとPDFの両方)
  2. 決算書一式と月次試算表(貸借対照表・損益計算書・製造原価報告書・株主資本等変動計算書)
  3. 補助元帳と固定資産台帳(得意先元帳・仕入先元帳・減価償却の明細)
  4. 電子取引データそのもの(サービス内に取り込んだ請求書・領収書のファイル)
  5. 消費税の税区分設定と勘定科目の設定内容(自動仕訳ルールを含む)

1から3までは「帳簿として残す」ためのもの、4は電子帳簿保存法への対応、5は乗り換え先で同じ処理を再現するためのものです。5を落とし忘れると、乗り換え後に「前期と同じ処理をしたいのに、どの科目にどの税区分を当てていたか分からない」という事態になります。これは仕訳データを見れば復元できると思われがちですが、自動仕訳のルール設定は仕訳データには残りません。仕訳自動化の仕組みとルール設計で触れたとおり、学習ルールはサービス内部に蓄積される情報であり、エクスポート対象に含まれないのが通例です。

そして、この5点を出すタイミングが重要です。後述するとおり、freeeは有料プランが切れた瞬間に古い取引が閲覧できなくなり、弥生は契約終了日を過ぎるとログインしてもデータを見られません。「解約してから、必要になったら出せばいい」は通用しないと考えてください。

3社のデータ保存ポリシーを同じ観点で並べる

3社の公式ヘルプを2026年7月26日時点で1ページずつ開いて確認し、条件を揃えて並べ直したものが次の表です。各社は「解約」「退会」「利用終了」と異なる用語を使い、説明の粒度もそろっていないため、そのまま読み比べても違いが見えません。そこで観点を5つに固定し、同じ問いを3社に当てる形で独自に集計しました。公式に記載がない項目は推測で埋めず「公開ヘルプに記載なし」と書いています。この「書かれていない」こと自体が、解約を検討する側にとっては判断材料になります。

観点 freee会計 マネーフォワード クラウド会計 弥生(クラウドサービス共通)
有料プラン終了後の閲覧 登録から1か月を経過した「取引」データは非表示となり、閲覧・編集・削除ができない 有償契約を解約しても仕訳は削除されない 契約終了日以降、データの参照を含めてサービスを利用できない
アカウント削除時 事業所を削除すると保存されているすべてのデータが削除される 退会(ユーザー設定から実施)が用意されている。削除の時期は公開ヘルプに記載なし 解約後に再契約する場合は新規契約となり、解約前のデータは利用できない
解約と退会の区別 「お支払いの停止」「メール配信の停止」「事業所の削除」の3段階として案内 有償契約の解約と退会を明確に区別。一時停止なら解約のみを推奨 解約(サービスの継続利用停止)として案内
解約前のデータ出力の案内 退会手順のページには記載なし 退会手順のページには記載なし 「解約前に帳簿を保存することをお勧めします」と明記
確認したページの最終更新日 2026年6月18日(退会)/2026年5月20日(データ表示期間) ページ上に更新日の表示を確認できず ページ上に更新日の表示を確認できず

表にすると、3社の設計思想の違いがはっきりします。freeeは「契約している間だけ見える」、弥生は「契約が終わったら見えない」、マネーフォワードは「契約が終わってもデータは残す」という方向です。ただしマネーフォワードについては、仕訳が削除されないことと、無償の状態でそれを画面から閲覧・出力できることは別の話です。この点について公開ヘルプに明示的な記載を見つけられなかったため、実際に解約を進める前に自社の契約内容でサポートに確認することを勧めます。

なお、ここで比較しているのは「データの保全」という一点だけです。機能や料金を含めた総合的な比較はクラウド会計ソフト比較と「クラウド会計の料金比較」を参照してください。

電子帳簿保存法の保存義務と、SaaS解約が作る空白

解約でデータが消えても、保存義務は消えません。ここが実務上いちばん危ういところです。

国税庁のタックスアンサーNo.5930によれば、法人は帳簿書類を原則として7年間保存する必要があります。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度については10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)です。起算点は「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から」とされています。

3月決算の法人が2026年3月期の申告を2026年5月末に提出したなら、その事業年度の帳簿は2033年5月末まで保存対象です。欠損金が出ていれば2036年5月末まで伸びます。一方、クラウド会計の契約は年単位です。保存義務の期間とサービス契約の期間は、まったく別の時間軸で動いているということになります。

この落差が問題になるのは、次のような場面です。

  • 税務調査で3期前の元帳の内訳を求められたが、その期間を記帳していたサービスは2年前に解約済み
  • 取引先との係争で、過去の請求書の発行履歴を証拠として提出する必要が生じた
  • 欠損金の繰越控除を使う年度になり、発生年度の帳簿を確認する必要が出た
  • M&Aのデューデリジェンスで、買い手側から過去5期分の補助元帳の提出を求められた

いずれも「解約したソフトの中にしかない」状態になっていると詰みます。特に4つ目は、解約から数年後に突然発生するタイプの要求です。

電子取引データは「電子のまま」保存する必要がある

もう一段厄介なのが電子取引です。メールで受け取った請求書PDFやWeb上でダウンロードした領収書は、電子帳簿保存法上、原則として電子データのまま保存しなければなりません。紙に印刷して保存する方法は、電子取引については認められていません。

クラウド会計に証憑を取り込んで保管している場合、その電子データの保存場所はサービス内部です。解約すればアクセスできなくなります。帳簿はCSVで出したから大丈夫、では足りないということです。取り込んだファイルそのものを、ファイル名や検索要件を満たす形で手元に落とす必要があります。要件の詳細は電子帳簿保存法の中小企業対応で整理しています。

ここで注意したいのは、多くのサービスの一括ダウンロード機能が「取引に紐づいたファイル」を対象にしている点です。取引に紐づけずにアップロードだけした証憑や、下書き状態の取引に添付したファイルは、一括出力の対象から漏れることがあります。出力後にファイル数を突き合わせる作業を、解約前のチェックに必ず入れてください。

freee会計を解約する場合の実際

freeeのヘルプセンターは、退会を1つの操作ではなく3つの段階として説明しています。2026年6月18日更新の「freeeから退会する(お支払いを停止する)」では、手順が次のように示されています。

以下の手順で退会できます。(有料プランへ契約している場合)お支払いを停止する/メールの配信を停止する(任意)/事業所(いわゆるアカウント)を削除する(任意)

そして事業所の削除について、同ページには「保存されているすべてのデータが削除されます。」と明記されています。ここは取り返しがつきません。

支払いを止めただけでも、見える範囲は狭まる

見落としやすいのは、事業所を削除しなくてもデータの見え方が変わる点です。2026年5月20日更新の「freee会計のデータ表示期間とデータ保存について」には、有料プランでは登録したすべてのデータの閲覧・編集・削除が可能である一方、お試しプランやプラン未契約の状態では次のようになると書かれています。

freeeに登録してから1か月が経過した「取引」データは非表示となり、閲覧・編集・削除ができなくなります

つまり、支払いを停止した時点で、直近1か月より古い取引は画面から消えます。「解約したけどアカウントは残してあるから、必要になったら見られる」という想定は成り立ちません。データを出すなら、有料プランが有効なうちに出し切る必要があります。

実務上の段取り

freeeを解約する場合、次の順序を勧めます。

  1. 有料プランが有効なうちに、管理画面から仕訳帳・総勘定元帳・補助元帳・固定資産台帳をCSVとPDFで出力する
  2. ファイルボックスに保管した証憑を一括ダウンロードし、取引数とファイル数を突き合わせる
  3. 決算書と申告書の控えをPDFで保存する(税務代理人が別途保管している場合も、自社でも持つ)
  4. 出力したファイルを開いて中身を確認する(空ファイルや文字化けが混ざっていないか)
  5. ここまで終えてから、お支払いの停止に進む

4番を飛ばす人が多いのですが、出力の失敗は解約後に気づいても手遅れです。ファイルサイズが極端に小さいものがないか、期首から期末まで通しで入っているか、行数が想定と合うかを確認してください。freee会計そのものの評価は「freee会計の評判と口コミ」にまとめています。

マネーフォワード クラウド会計を利用終了する場合の実際

マネーフォワードは、有償契約の解約と退会を明確に分けています。サポートサイトの「退会方法を教えてください。」では、退会が必須でないケースとして、一時的に利用を停止したい場合は有償契約の解約で足りること、メール配信の停止が目的なら設定変更で対応できること、新しい事業者が必要なだけなら事業者の追加作成で対応できることが挙げられています。

そのうえで、データについて次の記載があります。

マネーフォワード クラウド会計・確定申告は、有償契約を解約しても仕訳は削除されません。

3社のなかで、解約後もデータが残ることを公式に明言しているのはマネーフォワードだけです。これは乗り換えを検討する側にとって安心材料になります。

ただし「削除されない」と「使える」は別

注意が必要なのは、仕訳が削除されないことと、無償の状態で従来どおり閲覧・出力できることは別の話だという点です。有償契約が終わった後にどの画面まで使えるのか、CSV出力が可能なのかについて、2026年7月26日時点の公開ヘルプでは明示的な記載を確認できませんでした。

また、退会(アカウント自体の削除)を行った場合にデータがいつ削除されるのかも、公開ヘルプには記載がありません。「解約」で止めるのか「退会」まで進むのかで結果が変わる可能性が高いため、退会を選ぶ前に自社の契約でサポートに確認してください。

実務としては、マネーフォワードでも解約前にデータを出し切る前提で動くのが安全です。仕訳が残っていても、それを取り出す手段が確保されていなければ、保存義務を果たしたことにはなりません。サービスの使い勝手や機能面の評価は「マネーフォワードクラウド会計の評判」で扱っています。

弥生のクラウドサービスを解約する場合の実際

弥生は3社のなかで最も明確です。「サービスを解約したい/サービスの継続利用を停止したい」のサポートページには、次のように書かれています。

契約終了日以降、データの参照を含めてサービスはご利用いただけません。

さらに、再契約についても踏み込んだ記載があります。

解約後に再契約する場合は、新規での契約となります。解約前のデータを利用することはできません。

そして同じページに「解約前に帳簿を保存することをお勧めします。」という案内があります。3社のうち、解約前のデータ保存を公式ヘルプで明示的に促しているのは弥生だけでした。

契約終了日という期限が明確な分、段取りは立てやすい

弥生の場合、年契約であれば契約終了前月に更新案内のメールが届きます。この時点が実質的なアラートになります。裏を返せば、契約終了日を過ぎたら一切見られないため、逆算して作業日を確保する必要があるということです。

期末の繁忙期と契約終了日が重なると、データ出力が後回しになって期限を越えるリスクがあります。更新案内が届いた時点で、解約するかどうかにかかわらず出力作業の日程を押さえておくのが安全です。弥生会計 Nextの機能面は「弥生会計Nextレビュー」で詳しく見ています。

デスクトップ製品との違いに注意

弥生にはデスクトップ製品とクラウドサービスの両方があります。デスクトップ版はデータがローカルに保存されるため、ライセンスが切れてもファイル自体は手元に残ります。クラウドサービスはその前提が成り立ちません。「弥生を使っているから大丈夫」という感覚が、デスクトップ版の経験から来ている場合は特に注意が必要です。

乗り換え先へ引き継げるもの・引き継げないもの

解約が乗り換えとセットの場合、次の問いは「どこまで持っていけるか」になります。実務上の切り分けは次のとおりです。

比較的引き継ぎやすいもの

  • 勘定科目と補助科目のマスタ:CSVで出力して取り込むのが一般的。ただし科目コードの体系が違うと手作業のマッピングが発生する
  • 取引先マスタ:同上。インボイス登録番号を持っている場合は、その項目が引き継げるかを事前に確認する
  • 期首残高:試算表から手入力でも対応できる。件数が少ないため、移行の障害になりにくい
  • 当期の仕訳データ:CSVで移行できることが多いが、消費税区分の名称が各社で異なるため変換表が必要

引き継げない、または大きく劣化するもの

  • 自動仕訳の学習ルール:サービス固有の情報であり、移行の仕組みが用意されていない。乗り換え後は学習をやり直すことになる
  • 銀行・クレジットカードの連携履歴:連携そのものは再設定できるが、過去の明細取得履歴は引き継げない
  • 証憑と取引の紐づけ:ファイル自体は移せても、どの取引に紐づいていたかの関係は失われやすい
  • 承認ワークフローの履歴:誰がいつ承認したかの記録は、通常エクスポート対象外
  • 過年度の仕訳:移行ツールが当期のみを対象にしている場合がある。過年度はエクスポートしたCSVを保管する形が現実的

この整理から導かれる実務的な結論は明快です。過年度データは「乗り換え先へ移す」のではなく「保存用として手元に確保する」と割り切るほうが、作業も検証もはるかに楽になります。乗り換え先には当期以降のデータだけを持ち込み、過年度は出力済みのファイル一式を社内の共有ストレージに保管する。この方針なら、移行作業が過年度分の整合性チェックで止まることがありません。

乗り換え作業そのものの段取りはクラウド会計ソフト導入手順に、規模別の選定基準は中堅企業向けの選定フローにまとめています。freeeとマネーフォワードのどちらに移るかで迷っている場合はfreee vs マネーフォワードの比較が判断材料になります。

出力したデータをどこに、どう保管するか

出力までは意識されても、保管方法まで設計されていないケースが少なくありません。ここが崩れると、7年後に「ファイルはどこかにあるはずだが見つからない」という状態になります。

保存先は2か所以上に分ける

保存先の選択肢は大きく3つです。社内のファイルサーバーやNAS、法人向けクラウドストレージ、外付けドライブなどのオフラインメディアです。それぞれに弱点があります。社内サーバーは災害時に本社ごと失われるリスクがあり、クラウドストレージは契約が続く前提でしか成り立たず、外付けドライブは経年で読めなくなることがあります。

実務的には、クラウドストレージを主、オフラインメディアを従とする二重化が扱いやすい構成です。クラウド側は日常的にアクセスでき、オフライン側は年1回の棚卸しのタイミングで更新します。ここで気をつけたいのは、クラウド会計を解約する理由がコスト削減である場合、保管用のクラウドストレージにも同じコスト圧力がかかることです。保存義務の期間は7年から10年ですから、その間の維持費まで含めて判断してください。

電子取引データは検索できる形で並べる

電子取引データについては、保存しているだけでは要件を満たしません。取引年月日、取引金額、取引先の3項目で検索できる状態にしておく必要があります。専用システムを使わない場合、実務では次の2つの方法が使われています。

  • ファイル名で表現する方法:「20260331_1650000_カブシキガイシャ〇〇.pdf」のように、日付・金額・取引先をファイル名に含める。件数が少ない事業者向け
  • 索引ファイルを作る方法:表計算ソフトで一覧を作り、各行にファイル名・日付・金額・取引先を記録する。件数が多い場合はこちら。列でフィルタすれば検索要件を満たせる

クラウド会計から一括ダウンロードした証憑は、多くの場合、サービス内部のIDや連番でファイル名が付いています。そのままでは検索要件を満たせないため、ダウンロード直後にリネームするか索引を作る作業が発生すると見込んでおいてください。証憑が数百件を超える規模なら、この作業だけで半日はかかります。解約作業の工数を見積もるときに、この時間を忘れないことです。

担当者が代わっても分かる状態にする

7年から10年という期間は、経理担当者が2回か3回入れ替わってもおかしくない長さです。保管場所とファイル構成を、引き継ぎ資料に文章で残してください。最低限、どの期のどのソフトのデータがどこにあるか、保存期限がいつまでかを一覧にした管理表を作ります。フォルダ名を「旧会計ソフトデータ」のような曖昧な名前にせず、「2020-2025年度_freee会計_出力データ_保存期限2033年5月」のように、開かなくても中身と期限が分かる名前にしておくと事故が減ります。

解約のタイミングをいつにするか

解約日をいつに置くかで、作業量が大きく変わります。

決算確定後が最も安全

最も安全なのは、決算を確定し申告を終えたあとです。この時点なら、その事業年度のデータは動かず、出力したファイルと決算書の数字が一致します。乗り換え先には翌期の期首残高を入れれば済み、当期の仕訳が2つのソフトに分かれる事態も避けられます。

期中解約は突合の手間が跳ね上がる

期中に切り替える場合、当期の仕訳が旧ソフトと新ソフトに分かれます。決算のときに両方から出力して合算する必要があり、消費税の集計も分割されます。期中の乗り換えは、可能な限り避けるか、避けられないなら月初を境にするのが原則です。月の途中で切り替えると、同じ月の仕訳が2か所に分かれて、月次試算表の作成が煩雑になります。

更新月から逆算する

年契約の場合、更新月の直前に慌てて作業すると出力の検証が甘くなります。更新案内が届いたら、その時点で出力作業の日を決めてカレンダーに入れてください。目安として、契約終了日の1か月前には出力を終え、残り1か月を検証と予備日に充てる配分が現実的です。

並行運用の期間を作るかどうか

予算に余裕があれば、1か月から2か月ほど新旧のサービスを並行契約する選択肢もあります。乗り換え先で不足しているデータに気づいたとき、旧ソフトがまだ見られる状態であれば取り返しがつきます。金額としては1か月分の追加費用ですが、保険としては割安です。特に、証憑の紐づけや補助科目の粒度など、移行してみないと分からない不足が出やすい規模の大きい事業者では、並行期間を持つ価値があります。

解約前チェックリスト

ここまでの内容を、実際に手を動かす順序に落とします。契約が有効なうちに、上から順に消し込んでください。

出力する(契約有効期間中)

  • 仕訳帳(全期間・CSV/PDF)
  • 総勘定元帳(全期間・全科目)
  • 補助元帳(得意先別・仕入先別)
  • 固定資産台帳と減価償却明細
  • 月次試算表(全月)
  • 決算書一式(各期)
  • 消費税集計表と税区分別の内訳
  • 取り込んだ証憑ファイルの一括ダウンロード
  • 勘定科目・補助科目・取引先マスタ
  • 自動仕訳ルールの設定内容(画面キャプチャでも可)

検証する

  • 出力ファイルを実際に開き、期首から期末まで通しで入っているか確認する
  • 仕訳の件数を画面表示とCSVの行数で突き合わせる
  • 証憑のファイル数を取引件数と突き合わせ、漏れがないか確認する
  • 文字化け・空ファイル・0バイトのファイルが混ざっていないか確認する
  • 試算表の残高が決算書と一致するか確認する

保管する

  • 保存先を1か所に決める(バックアップを含めて2か所以上に置く)
  • 電子取引データは検索要件を満たす形(日付・金額・取引先)で整理する
  • 保存期限を管理表に記録する(原則7年、欠損金がある事業年度は10年)
  • 担当者が代わっても場所が分かるよう、保管場所を引き継ぎ資料に明記する

解約手続きに入る

  • 顧問税理士に解約と乗り換えの予定を共有する
  • 解約と退会(アカウント削除)のどちらを行うかを決める
  • 解約日と次のサービスの利用開始日の間に空白を作らない
  • 銀行・カード連携の解除と、連携先サービス側の設定も確認する

よくある疑問

解約後に税務調査が来たらどうなりますか

調査で求められるのは帳簿と証憑であり、特定のソフトで表示できることではありません。CSVやPDFで手元に保存してあれば対応できます。逆に、ソフトの中にしかない状態で解約していると、提出できるものがない状態になります。保存義務の主体は納税者側にあり、サービス提供者ではありません。

会計事務所が別のソフトを使っている場合の保存義務の所在

事務所側にデータが残っていても、自社の保存義務が免除されるわけではありません。事務所が保管しているものと自社が保管すべきものを整理し、どちらがどの期間の何を持つかを書面で確認しておく運用が実務で採られています。事務所との契約が終了した場合に返却されるデータの範囲も、あわせて確認しておく価値があります。

一部の機能だけ解約することはできますか

マネーフォワードや弥生のように複数のサービスを組み合わせて契約している場合、給与や請求書だけを解約するといった部分解約が可能なことがあります。ただし、解約したサービス側にあるデータ(給与明細、請求書の発行履歴など)は同じ問題を抱えます。会計本体を継続するからといって、解約したサービスのデータが自動的に守られるわけではありません。

データを出力する時間が取れない場合はどうすればいいですか

最低限、仕訳帳・総勘定元帳・決算書・証憑の4つを優先してください。この4つがあれば、後から補助元帳を再構成することは可能です。逆に証憑を落とし忘れると、電子取引データの保存要件を満たせなくなります。時間がないときほど、証憑の一括ダウンロードを先に実行してください。

解約を先延ばしにして、契約だけ最低プランで維持する選択はどうですか

保存目的で契約を維持する判断はあり得ますが、コストは7年から10年にわたって発生します。年額数万円でも10年で数十万円です。出力して自社保管するほうが、金額でも管理の確実性でも有利になることが多いはずです。加えて、サービス側の仕様変更やプラン改定で、想定した閲覧範囲が将来も維持される保証はありません。

まとめ

クラウド会計の解約は、契約を止める手続きであると同時に、帳簿の保管方法を切り替える作業です。3社の公式ヘルプを突き合わせた結果、弥生は契約終了日以降は参照もできず、freeeは支払い停止の時点で古い取引が非表示になり、事業所削除で全データが消えます。マネーフォワードは解約後も仕訳が削除されないと明記していますが、それを取り出す手段まで保証されているかは公開情報からは読み取れませんでした。

共通して言えるのは、契約が有効なうちに出し切るのが唯一の確実な方法だということです。法人の帳簿保存義務は原則7年、欠損金が生じた事業年度は10年で、起算点は確定申告書の提出期限の翌日です。この期間は、どのサービスの契約期間よりも長くなります。

解約を決めた時点でこの記事のチェックリストを開き、出力・検証・保管の3段階を順に消し込んでください。作業自体は半日から1日で終わります。その半日を惜しんだ結果として失われるものの大きさと比べれば、確実に割の合う投資です。

免責事項:本記事は2026年7月26日時点で各社の公式ヘルプおよび国税庁タックスアンサーNo.5930を確認して作成しています。各社の仕様は変更される可能性があるため、実際の解約前には必ず最新の公式情報とご自身の契約内容をご確認ください。個別の税務判断については顧問税理士にご相談ください。


【記事情報】
・監修:本記事は税理士等の有資格者による監修を受けていません。
・免責事項:本記事は公開・更新時点の公表情報に基づき執筆していますが、個別の税務判断については管轄税務署または担当税理士へご相談ください。各サービスの料金・機能の最新情報は各公式サイトをご確認ください。