電子帳簿保存法の検索要件(取引年月日・取引金額・取引先による検索)は、freee会計とマネーフォワード クラウド会計なら仕訳や取引に取引先情報を入力するだけで満たせる。弥生は会計ソフト本体ではなく、別サービスの「スマート証憑管理」側で証憑ごとに情報を設定する仕組みになっている点が3社で最も違う。

電子帳簿保存法の検索要件とは

電子取引データの保存には「真実性の確保」と「可視性の確保」が必要で、可視性の確保のうち検索機能については次の3要件が定められている。

  • 取引年月日、取引金額、取引先により検索できること
  • 日付または金額の範囲を指定して検索できること
  • 2つ以上の記録項目を組み合わせた条件で検索できること

制度そのものの詳しい解説や適用範囲は電子取引データの保存要件と電帳法における検索機能の構築手順で整理されているので、この記事では制度の理屈より「主要ソフトのどの設定が要件を満たすか」に絞って扱う。電子取引データ保存の義務化そのものを含めた中小企業向けの全体像は電子帳簿保存法の中小企業対応でも整理しているので、あわせて確認しておきたい。

3ソフトの検索要件対応方法の比較

同じ検索要件でも、どの画面のどの入力で満たすかは3社で発想が異なる。

比較軸 freee会計 マネーフォワード クラウド会計 弥生(スマート証憑管理)
検索要件を満たす場所 ファイルボックス(証憑と取引の紐付け) 仕訳の摘要欄または取引先欄 会計ソフト本体とは別の「スマート証憑管理」
取引先情報の入力方法 取引への自動補完・OCRによる推測入力 摘要欄への手入力、または取引先欄への設定 証憑詳細画面でOCRまたは手動設定
日付・金額の範囲検索 ファイルボックス・仕訳帳の検索機能で対応 仕訳帳・振替伝票画面で標準対応 証憑一覧の検索条件で対応
周辺製品との自動連携 freee会計内で完結 マネーフォワード クラウドの各製品と連携 弥生販売・Misocaからの証憑は自動反映

検索要件対応にかかる追加費用

2026年8月2日時点で公式サイトを確認した限り、3社とも検索要件そのものへの対応で追加料金が必須になる設計ではない。

製品 検索要件対応の位置づけ 追加費用の有無
freee会計 全プラン共通の標準機能 追加費用なし
マネーフォワード クラウド会計 仕訳・振替伝票の標準機能 追加費用なし(仕訳への取引先情報の入力が前提)
弥生(スマート証憑管理) 弥生の会計・確定申告サービス契約者は無料で利用可 既存契約者は追加費用なし

調査日: 2026-08-02(各社公式サイト)

具体的な設定手順

freee会計は、領収書や請求書のPDF・画像をファイルボックスにアップロードし、対応する取引に紐付けると、取引先・日付・金額といった電子保存項目がその取引の内容から自動的に補完される。OCR解析による推測入力も併用されるため、手入力の手間は他の2社より小さい設計になっている。

マネーフォワード クラウド会計は、仕訳の摘要欄に取引先名を入力するか、仕訳の借方・貸方に「取引先」を設定するかのいずれかの方法で、検索要件のうち「取引先」による検索を満たす。日付・金額の範囲検索や複数条件の組み合わせ検索は、仕訳帳や振替伝票の画面で標準的に対応しているため、追加設定は基本的に不要である。

弥生は会計ソフト本体ではなく、別サービスの「スマート証憑管理」を使う設計になっている。証憑をアップロードした後、証憑の詳細画面で取引先名・日付・金額などをOCRまたは手動で設定すると、その情報をもとに検索できるようになる。弥生販売やMisocaと連携して取り込んだ証憑、取引先からデジタルインボイスとして受信した証憑については、これらの情報が自動で反映される。一方で、それ以外の経路で受け取った証憑は手動での情報設定が残り、件数が多い事業者には不便に感じられる場面もある。

3社を条件を揃えて独自に集計すると、freeeとマネーフォワードは会計ソフト本体の管理画面での日常的な入力作業の延長で要件を満たせるのに対し、弥生は証憑管理という別の作業ステップを挟む設計だと分かる。弥生会計本体には証憑の検索機能そのものは搭載されていない点が、他の2社と最も違う。日常的にどちらの操作フローに乗せやすいかは、既存の入力担当者の作業手順に左右される。経費精算ソフトで受け取る領収書データも電子取引データ保存の対象になるため、経費精算システムの費用対効果で扱っている領収書のペーパーレス化とあわせて検討すると、検索要件への対応も含めた業務設計がしやすい。

選定基準

検索要件への対応方法を踏まえると、実務では次の点を確認しておきたい。

  • 証憑を「取引・仕訳」に紐づけて検索したいか、証憑ファイル単体で検索したいか
  • OCRの自動読み取り精度と、手動で修正する頻度
  • 弥生販売・Misocaなど周辺製品からの自動連携があるか
  • 検索要件対応が会計ソフト本体の標準機能か、別サービス・別契約が必要か

会計ソフトそのものの選び方から確認したい場合はfreee vs マネーフォワード徹底比較、解約時のデータの扱いまで含めて検討したい場合はクラウド会計を解約したらデータはどうなる?もあわせて確認しておくと、電帳法対応だけでなく長期的な運用まで見据えて選定できる。

高度な検索設定が不要な場合

次のようなケースでは、ソフトの検索機能を使いこなすための設定に時間をかける優先度は低い。

  • 基準期間の売上高が5,000万円以下で、税務調査等の際に電磁的記録のダウンロードの求めに応じられる体制がある場合。この条件を満たせば検索機能の確保自体が不要になる取り扱いがある
  • 電子取引の件数が極端に少ない小規模な事業者。ファイル名に日付・取引先・金額を規則的に含めるか、取引先ごとにフォルダを分けるといった手作業でも検索要件を満たせるため、無理にソフトの検索機能に頼る必要はない

このあたりの条件分岐や適用可否の詳細は制度側の話になるため、電子帳簿保存法:電子取引データの保存要件チェックリストで自社が該当するか確認してから、ソフト側の設定を検討する順番が効率的である。

まとめ:入力の起点が違うだけで、目指す状態は同じ

freee会計とマネーフォワード クラウド会計は日常の仕訳・取引入力の延長で検索要件を満たし、弥生はスマート証憑管理という別サービスで証憑ごとに情報を設定する。どの方式が自社に合うかは、経理担当者が普段どの画面で作業しているかに左右される。すでに使っている会計ソフトがあるなら、まずはその製品の設定画面で取引先情報がどこまで入力されているかを確認するところから始めるとよい。


【記事情報】
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