法令・官公庁資料に基づき編集部が作成・検証しています。個別の税務判断ではありません。
公開日: 2026年8月18日 / 更新日: 2026年8月18日
申告書を出す前に気づいたなら、会計ソフトの一括修正で終わります。出した後なら帳簿を直すだけでは終わらず、納める税金が少なすぎたときは修正申告、多すぎたときは更正の請求という別の手続きになります。分岐は「間違いの大きさ」ではなく「申告済みかどうか」です。以下、期中と期末後に分けて、ソフト別の直し方と手続きの期限を整理します。
直す前に、申告済みかどうかを確認する
税区分の設定ミスで多いのは、免税事業者からの課税仕入れに「課税仕入れ 10%」をそのまま当ててしまい、仕入税額相当額を全額控除してしまう型です。経過措置の対象になる取引は、控除割合を掛けた額しか控除できません。控除割合は課税仕入れを行った日で決まり、2023年10月1日から2026年9月30日までが80%、2026年10月1日から2028年9月30日までが70%、以降は2028年10月から50%、2030年10月から30%、2031年10月1日以降は控除できません(根拠: 平成28年改正法附則52、令和8年度税制改正)。制度そのものの整理は税制ナビのインボイス経過措置70%の記事に、経理側で先に決めておくことは2026年10月の70%移行で中小企業経理がやるべき対応にまとめています。
ここから先の手順は、次の2つで完全に分かれます。
- 期中(消費税の確定申告書をまだ提出していない) — 帳簿を直せば足ります。税務署への手続きは発生しません
- 期末後(提出済み) — 帳簿を直したうえで、修正申告または更正の請求が要ります
期中に気づいたとき:ソフトの一括修正で閉じる
設定を直す前に、これから直す対象が何件あるかを先に数えてください。件数が3桁に乗ると、後述するとおり一括修正の取り消しができないソフトがあるためです。設定の入り口そのものについては経過措置70%への切替で確認する5項目にまとめています。
マネーフォワード クラウド会計
「一括編集」画面で対象の仕訳を選び、貸方(または借方)の税区分にチェックを入れて、修正前と修正後の税区分を指定します。指定できたら「対象の編集を実行する」を押します。修正前の条件に完全一致する仕訳行だけが対象になるので、同じ勘定科目でも税区分が何種類か混ざっている場合は、種類の数だけ実行が要ります。公式ヘルプは「一括編集を誤って実行した場合、もとに戻すことはできません」と明記しています。取り消しの手段は用意されていません。仕訳を前面に置くマネーフォワードの設計は税区分の一括操作と相性がよい反面、簿記を前提としたクセがそのまま出る場面でもあります。
弥生会計(デスクトップ版)
仕訳日記帳を開き、検索で対象を絞り込んでから「置換」をクリックし、仕訳一括置換の画面で置換前と置換後の税区分を指定します。置換できる税区分は「置換前1種類 → 置換後1種類」の組だけで、複数の税区分をまとめて別の1つに寄せることはできません。貸借を分けて対象を指定することはできます。実行前にバックアップの手順が挟まり、ファイル名は「事業所データ名_置換前_年月日_時刻」が初期値として入ります。この手順は弥生会計のスタンダード・プロフェッショナル・ネットワーク・AEが対象で、オンライン版については同じヘルプに記載がありません。
freee会計
freeeにも取引の一括修正と税区分設定の画面がありますが、編集部の取得環境からは2026年8月18日時点でヘルプセンターの本文に到達できませんでした(該当記事はいずれもHTTP 403を返しました)。手順を推測で書くことはしないので、freeeを使っている場合は公式ヘルプの「6.3 多数の取引をまとめて修正する」(記事ID 13691416189465)と「登録した取引を修正・削除する」(同 202847110)を直接ご確認ください。なお勘定科目に紐づく税区分をマスタ側で変更した場合に、登録済みの取引へ遡って反映されるかどうかは、実務上の影響が大きいわりに誤解されやすい箇所です。freee特有のクセは経理経験者がつまずく5点にも整理しています。
期末後に気づいたとき:手続きが2種類に分かれる
すでに申告書を提出しているなら、帳簿の修正は前提作業にすぎません。税額がどちらへ動くかで手続きが変わります。
納める税金が少なすぎた(=控除しすぎていた)場合は修正申告です。税務署の調査の事前通知を受ける前に自主的に提出すれば過少申告加算税はかかりませんが、事前通知を受けた後だと新たに納める税金に5%から15%の過少申告加算税が課されます。修正申告書を提出した日が納期限になり、延滞税も併せて納めることになります。
逆に納める税金が多すぎた(=控除が足りなかった)場合は更正の請求です。請求できる期間は原則として法定申告期限から5年以内と定められています。
控除しすぎていた場合、いくら戻すことになるか
免税事業者等からの課税仕入れを全額控除してしまっていた場合の過大控除額は、仕入税額相当額に「1 − 控除割合」を掛けた額です。税込年額別に計算すると次のようになります(標準税率10%の税込仕入れとして計算。円未満切捨て)。
| 対象仕入れ(税込・年額) | 80%期(〜2026年9月) | 70%期(2026年10月〜) | 50%期(2028年10月〜) |
|---|---|---|---|
| 110万円 | 20,000円 | 30,000円 | 50,000円 |
| 330万円 | 60,000円 | 90,000円 | 150,000円 |
| 550万円 | 100,000円 | 150,000円 | 250,000円 |
| 1,100万円 | 200,000円 | 300,000円 | 500,000円 |
| 2,200万円 | 400,000円 | 600,000円 | 1,000,000円 |
控除割合が80%から70%へ下がる2026年10月以降は、同じ金額を間違えても戻す額が1.5倍になります。月あたり27万円ほどの外注費を免税事業者へ支払っている事業者(税込年額330万円)なら、80%期の6万円に対して70%期は9万円です。
今すぐ確認する順番
- 消費税の確定申告書を提出済みかどうかを確認する(ここで手順が分かれます)
- 取引先ごとの登録番号の有無を突き合わせ、経過措置の対象になる仕入先を特定する
- その仕入先の取引に当たっている税区分を、期間を区切って抽出する
- 抽出した件数と、上の表で概算した影響額を控える
- 期中なら一括修正、提出済みなら修正申告または更正の請求へ進む
一括修正をやめておいた方がいい場合
一括修正が向かないケースが3つあります。
1つめは、同じ仕入先の取引に複数の税区分が正しく混在している場合です。マネーフォワードも弥生も「修正前1種類 → 修正後1種類」の指定しかできないので、混在したまま一括で寄せると、もともと正しかった行まで巻き込みます。
2つめは、対象期間が決算期をまたいでいる場合です。前期分の税区分を動かすと前期の申告内容と帳簿が食い違い、期中の話だったはずのものが修正申告の話に変わります。
3つめは、件数が数百件規模で、取り消しができないソフトを使っている場合です。マネーフォワードの一括編集に取り消しはなく、弥生はバックアップを取る手順が挟まりますが、それは取り消しではなく復元です。件数が多いときは、まず数十件で試して結果を確認してから残りを流すほうが安全です。
よくある質問
税区分を直すと、過去の年度の数字まで変わってしまいませんか
変わります。だからこそ、修正する対象の期間を先に区切ってください。提出済みの年度に手を入れた時点で、帳簿の修正だけでは終わらなくなります。
金額が小さければ、そのままにしておいても構いませんか
金額の大小で手続きの要否が変わる仕組みにはなっていません。納める税金が少なすぎた場合の修正申告に下限額の定めはありません。判断が必要な場合は税理士にご相談ください。
取引先が登録番号を持っているかどうかは、どこで確認できますか
国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで登録番号から検索できます。請求書に記載された番号をそのまま信じるのではなく、公表サイト側で突き合わせるのが確実です。
控除割合と適用期限は国税庁のインボイス制度に関する資料で2026年7月30日に、修正申告と更正の請求の取扱いは国税庁タックスアンサーNo.2026で、各会計ソフトの操作手順は各社の公式ヘルプで、いずれも2026年8月18日に確認しています。freee会計のヘルプは同日、編集部の取得環境から本文を取得できませんでした。本記事は一般的な解説であり、個別の税務判断については税理士にご相談ください。