導入ガイド

PR 本ページはアフィリエイト広告を含みます

クラウド会計の権限設定とアクセスログ — 経理2人で残る兼務は1本

優良な電子帳簿が求めているのは帳簿データの訂正削除履歴で、社内の権限設定とは別系統です。freee・マネーフォワード・弥生の権限区分がどこまで統制を肩代わりするかと、経理の人数で切れる兼務・切れない兼務が変わることを整理しました。

更新2026-09-27出典4件(本文中のリンク)監修なし
導入ガイド公開 2026年9月12日更新 2026年9月27日読了 約17分

優良な電子帳簿が求めているのは「訂正や削除をしたら、その事実と内容があとから確認できること」です。これは会計ソフトの側が満たす要件で、社内の権限設定で満たすものではありません。権限設定が効くのはその手前 — 誰が起票し、誰が承認し、誰がマスタを触るかの切り分けです。経理側でやることは3つ、承認と記帳を別のユーザーに割ること、勘定科目と自動仕訳ルールの保守を記帳担当から外すこと、そして「操作ログがあるから追える」を確かめることです。弥生会計のユーザー作業ログは、管理者権限があれば本日分を残して全員分を消せます。

優良な電子帳簿が見ているのは操作ログではなく帳簿データの履歴

電子帳簿保存法施行規則の第5条第5項第1号は、優良な電子帳簿の要件を3方向から書いています。①訂正または削除を行った場合にこれらの事実および内容を確認できること、通常の期間を経過した後に入力した場合にその事実を確認できること。②関連する帳簿の記録事項と相互にその関連性を確認できること。③取引年月日・取引金額・取引先を検索条件に設定でき、日付と金額は範囲指定ができ、2以上の項目を組み合わせられること。

③のうち範囲指定と組み合わせ検索は、税務調査で電磁的記録のダウンロードの求めに応じられるようにしている場合には不要になります。条文が要件から外しているので、検索機能の作り込みで悩む前にここを確認したほうが早く終わります。

①の後半にある「通常の期間を経過した後に入力した場合にその事実を確認できること」は、遅れて入れた仕訳が分かる状態を求めています。月をまたいでから入力した分が、入力日つきで見分けられるかという話です。締めの後に差し込まれた仕訳を見つける手がかりが、要件の中に最初から入っていることになります。

①の「訂正または削除の事実および内容」は、誰が操作したかを記録するアクセスログとは別物です。条文が求めているのは帳簿データそのものの訂正削除履歴で、ログイン履歴や画面操作の記録ではありません。クラウド会計3製品はいずれもこの履歴を持ちますが、社内の不正を止める話になると要件の外側へ出ます。そこから先は権限の割り方の問題です。

規則5条5項1号イ訂正削除の履歴
同 ロ帳簿間の関連性
同 ハ3項目の検索

要件を満たすと何が返ってくるかは法律の側に書いてあります。優良な電子帳簿に記録された事項について修正申告や更正があり、過少申告加算税がかかる場面では、その税額に100分の5を乗じた金額が控除されます。軽減の根拠は電子帳簿保存法第8条第4項です。

同じ条文にただし書が付いていて、税額の計算の基礎となるべき事実に隠蔽または仮装されたものがあるときは、この軽減は適用されません。つまり履歴が残る形で帳簿を作っていても、その履歴をかいくぐる操作があれば軽減は消えます。権限設定と操作ログの話がここで制度側とつながります。要件を満たすことと、要件を満たした状態を維持できることは別だからです。

優良な電子帳簿は青色申告特別控除の側にも効きます。令和9年分以後の65万円控除に上乗せする形の要件として位置づけられているため、届出を出している会社では控除額の前提が今の運用に依存します。


姉妹サイト
電子帳簿保存法の区分と義務・猶予措置の横断整理(税制ナビ)

freeeは権限セットを配るが、細かく削れるのは上位プランから

出典: freee公式ヘルプ「メンバーが利用できる機能を指定する(権限管理)」、「メンバーが利用できる機能を編集する(カスタム権限)」、「『取引登録のみ』の権限で口座残高などは見えますか?」

freee会計はメンバーに「権限セット」を付与する形です。既定で用意されているのは管理者、一般(経理)、取引登録のみ、閲覧のみ、一般(経理以外)、申請・承認の6つ。後ろの2つには前提があり、一般(経理以外)は法人プランのみ、申請・承認は個人ならプレミアムプラン、法人ならベーシックプラン以上で使えます。

権限セットの中身を編集したり、使える口座と部門を指定したりする詳細設定も、同じく個人はプレミアム、法人はベーシック以上です。最小構成のプランで運用している会社は、既定の6つから選ぶところまでになります。権限管理そのものを設定できるのは、管理者の権限セット、または管理者をコピーして作った権限セットを持つメンバーだけです。

「取引登録のみ」は起票専任に割る想定の権限で、取引入力など一部のメニューしか表示されず、ホーム画面が出ません。口座残高が見えないのはそのためです。残高を見ながら入力させたい運用とは噛み合わないので、割る前に入力手順の側を確かめておく必要があります。

やりたいこと freee会計での扱い
起票専任に絞る 権限セット「取引登録のみ」。取引入力など一部メニューだけが表示され、ホーム画面と口座残高は出ない
記帳と承認を分ける 権限セット「申請・承認」。個人はプレミアムプラン、法人はベーシックプラン以上
使える口座・部門を絞る 権限管理の詳細設定。個人はプレミアム、法人はベーシック以上
権限セットの中身を変える カスタム権限。設定できるのは管理者、または管理者をコピーした権限セットを持つメンバー
操作の記録を見る 公式ヘルプに記載なし・要確認
プランで割れ目が出る

権限セットのカスタマイズと口座・部門の指定は上位プランの機能です。最小構成のプランでは既定の6セットから選ぶ運用になり、「この口座だけ触らせない」という切り方はできません。

権限セットの編集画面が自社プランで開くかを無料トライアルで確かめる →

マネーフォワードは機能ごとの可否が一覧で公開されている

出典: マネーフォワード クラウド会計サポート「『メンバーの追加・管理』画面の使い方」

マネーフォワード クラウド会計の権限は、オーナー、管理者、一般、取引登録のみ、監査、閲覧のみ、カスタムの7種類です。公式ヘルプが機能カテゴリ18行×権限5列の一覧表を出しているので、どの権限で何が閉じるかを推測せずに割り当てられます。表の記号は◯が入力・編集可能、△が閲覧のみまたは一部機能のみ、✕が入力も閲覧も不可です。

機能 管理者 一般 取引登録のみ 監査 閲覧のみ
手動で仕訳 ◯ ◯ ◯ △ △
連携サービスから入力 ◯ ◯ ✕ △ △
帳簿管理 ◯ ✕ ✕ ✕ △
決算・申告 ◯ ✕ ✕ △ △
インポート/エクスポート ◯ ◯ ✕ △ △
勘定科目・取引先・タグ ◯ ◯ ✕ △ △
メンバーの追加・管理 ◯ ✕ ✕ ✕ ✕

この表で効いてくるのは「メンバーの追加・管理」の行です。管理者だけが◯で、一般以下はすべて✕。権限を増やす操作が管理者に閉じているので、起票担当が自分の権限を広げる経路がありません。「帳簿管理」と「決算・申告」も一般が✕なので、締めた帳簿に手を入れる操作は管理者側に寄ります。

一方で「勘定科目・取引先・タグ」は一般が◯です。起票担当に一般を割ると、科目とタグの新設まで一緒に付いてきます。自動仕訳ルールも同じ側にあります。マスタを触らせたくないなら、一般ではなく取引登録のみを割るか、カスタムで組むことになります。オーナー権限は各事業者に1アカウントだけで、移譲するには相手がメール認証とログインを済ませている必要があります。退職者がオーナーのまま連絡が取れなくなると詰まる場所です。

監査権限でもデータは出ていく

会計士や税理士に割る想定の「監査」でも、インポート/エクスポートが△で残ります。閲覧だけを渡したつもりでも、帳簿データの持ち出し自体は閉じません。

承認を通さないと帳簿に載らない形にするなら会計Plusの側

出典: マネーフォワード クラウド会計Plusサポート「『マネーフォワード クラウド会計』と『マネーフォワード クラウド会計Plus』の違いを教えてください。」

上の権限一覧には承認という区分がありません。起票と確認を人で分けることはできますが、承認しないと帳簿に反映されない、という止め方はこの製品では作れない形です。

同じマネーフォワードでも会計Plusになると構造が変わります。入力された仕訳は承認者が承認することで帳簿に反映され、設定された承認者だけが承認できます。権限も入力のみ・承認のみといった単位で割れます。さらに仕訳ごとに、誰がいつ登録・申請・更新・承認・削除したかの履歴が残ります。操作者の記録と帳簿データの履歴が同じ画面でつながるのは、ここまで来てからです。会計Plusではロールを任意に追加でき、既定ロールの権限を編集したり、1人に複数のロールを割り当てたりもできます。

製品の選び直しが伴うので、権限設定の調整だけで片付く話ではありません。判断としては、承認の不在を人の運用で埋められる規模かどうかが分かれ目になります。

弥生会計はメニュー単位で削れるが、作業ログは管理者が消せる

出典: 弥生公式サポート「ユーザーの登録」、「ユーザーの作業ログの表示」、「仕訳の承認機能の概要」

弥生会計は[ツール]メニューの[ユーザー管理]から[ユーザー設定]を開いて登録します。登録できるのは「管理者」または「管理者の権限」を持つユーザーだけです。ユーザー名は全角10文字(半角20文字)以内という制限があり、部署名まで入れた命名規則を作ると入りきりません。

[管理者の権限]にチェックを付けなかったユーザーには、[使用できるメニュー]と[使用できる機能]のタブが出ます。ここはメニュー項目ごとのチェックボックスなので、たとえば仕訳日記帳と伝票だけを開けて他を閉じる、という削り方ができます。freeeとマネーフォワードのセット選択より細かい粒度です。ひとつ注意点があって、バックアップを制限すると[ファイル]メニューからの手動バックアップが実行できなくなります。繰越処理など他の機能に付随するバックアップのほうは動きます。

複数の事業所データを持っている会社では、ユーザー管理は事業所データごとに設定します。1か所直したから全部直った、にはなりません。グループ会社分をまとめて見ている会社ほど、抜けが出やすい場所です。

やりたいこと 弥生会計の設定項目(画面名)
起票者ごとにログインを分ける [ツール]→[ユーザー管理]→[ユーザー設定]でユーザーとパスワードを登録
使える機能を絞る [管理者の権限]を外したうえで[使用できるメニュー][使用できる機能]タブでチェックを外す
記帳と承認を分ける [事業所設定]で仕訳承認機能を設定し、ユーザーに[承認権限][取消権限]を付与
操作の記録を見る [ツール]→[ユーザー管理]→[ログの表示]。[ログの書出]でテキストファイルへ
他ユーザーの仕訳を見せない ユーザー設定の「他ユーザーが入力した仕訳の表示」を省略する

承認権限が出る条件と、一度設定すると戻せない場所

仕訳の承認機能を使うと、入力とインポートで登録された仕訳はいったん未承認仕訳になり、承認権限を設定したユーザーだけが承認できます。承認された仕訳は、承認を取り消さないかぎり修正も削除もできません。記帳と承認を人で分ける統制を、ソフト側で強制できる形です。

ただし[承認権限][取消権限]の項目が画面に出るのは、プロフェッショナル2ユーザー、ネットワーク、AEのマルチユーザーで、かつ仕訳承認機能を設定したデータの場合です。スタンダードの単独ユーザー環境では選択肢として現れません。そして承認機能は事業所設定で一度設定すると、以降は解除できません。試しに入れてみる、が効かない設定です。初期設定で用意されている「管理者」ユーザーには承認権限を付けられないので、承認者は別に登録することになります。

ログの消去は本日分を残して全員分

管理者権限のあるユーザーは[ユーザー管理]の[ログの表示]から[ログの消去]を実行でき、本日分のログを残して全ユーザーのログが消えます。作業ログを内部統制の証拠に使うなら、消える前にテキストファイルへ書き出して別の場所に置く運用が要ります。

注意点

3製品に共通して、ユーザー権限の記録と帳簿データの訂正削除履歴は別系統です。優良な電子帳簿の要件を満たしているかどうかと、社内で誰が何をしたか追えるかどうかは、それぞれ別に確認することになります。青色申告特別控除の要件として優良な電子帳簿を使う場合の設定は2027年から青色申告特別控除が変わる|freee・MF・弥生の設定対応表で製品別に並べています。

記帳と承認を人で分けるとき、製品が肩代わりする範囲は3段に割れる

ここまでの3製品を、統制の観点で並べ直すと段差がはっきりします。見るのは2点だけです。承認を通さない仕訳を帳簿に載せない形をソフトが強制できるか、そして誰がいつ何をしたかの履歴が残るか。

製品 承認をソフトで強制できるか 操作者の履歴
freee会計 申請・承認の権限セットがある(個人はプレミアム、法人はベーシック以上) 公式ヘルプに記載なし・要確認
MF クラウド会計 権限の区分に承認が無い 公式ヘルプに記載なし・要確認
MF クラウド会計Plus 承認して初めて帳簿に反映される。入力のみ・承認のみで権限を割れる 仕訳ごとに登録・申請・更新・承認・削除の履歴
弥生会計 仕訳承認機能。ただしマルチユーザー環境かつ設定後は解除不可 ユーザー作業ログ(管理者が消去可)

3段というのは、承認が無い段、承認はあるが操作履歴が別系統の段、承認と履歴が同じ製品の中でつながる段、の3つです。上の段へ行くほど製品の価格帯が上がるので、統制の要求と支払える額の折り合いをどこで付けるかという話になります。

ひとつ補助線を引くと、承認をソフトで強制できない製品でも、締め後の帳簿を触れる人を絞ることはできます。マネーフォワードの一覧で「帳簿管理」と「決算・申告」が一般権限で✕になっているのがそれにあたります。承認の前段を止められなくても、確定した後ろを止める形です。逆に弥生会計では、承認済みの仕訳は承認を取り消さないと修正も削除もできないため、止める位置が承認の側にあります。

経理の人数で、切れる兼務と切れない兼務が決まる

前提: 分けたい役務を記帳・承認・マスタ保守・出納の4つ、同一人物が持つと相互牽制が消える組を「記帳×承認」「記帳×出納」「マスタ保守×記帳」「承認×出納」の4本と置いた場合
経理の人数 残る危険ペア 残し方の選択肢
1人 4本 選べない(全部が兼務になる)
2人 1本 3通り(記帳×承認 / 記帳×出納 / 承認×出納)
3人 0本 12通りの配り方すべてで0本
4人 0本 役務ごとに1人ずつ
5人 0本 余剰1人

算式: 4役務をN人へ配る全N4通りを数え上げ、同一人物が持ってしまう危険ペアの本数が最小になる配置を採った値

効いてくるのは2人と3人の間の差です。4人いないと分けられないと考えられがちですが、危険ペアは4役務のすべての組み合わせではなく4本なので、3人いれば配り方次第で0本にできます。役務の数ではなく、衝突する組の数で決まります。

経理が2人の会社では、どう配っても1本は残ります。ただし残し方は選べて、3通りのどれかです。ここで効くのは、この3通りに「マスタ保守×記帳」が入っていないことです。勘定科目と自動仕訳ルールの保守を記帳担当から外す切り方は、2人でも必ず成立します。マネーフォワードで一般権限を起票担当に割ると、この切り方が最初に潰れます。

残す1本を選ぶなら、金銭が動かない「記帳×承認」が最も影響が小さくなります。「記帳×出納」と「承認×出納」は、起票と支払実行、あるいは承認と支払実行が同じ人に乗るので、資金の流出が1人で完結します。経理1人の会社で権限設定を細かく詰めても、この4本は残ったままです。

人数で決まるのは配れるかどうかで、製品が決めるのは強制できるかどうか

表の値は人の配り方だけを見たものです。実際には、配ったとおりに動くことをソフトが保証してくれるかどうかが別にあります。同じ「記帳と承認を分けた」でも、承認しないと帳簿に載らない製品と、権限を分けただけで運用は人任せの製品では、残っている危険が違います。

経理の人数 やること 製品側で足りない部分
1人 権限設定では解けない。出納を経理の外へ出す どの製品でも解けない
2人 マスタ保守を記帳担当から外す。残す1本を決める 承認を強制できない製品では、残した1本が運用頼みになる
3人 4役務を3人へ配り、危険ペアを0本にする 承認者を置いても、承認前の仕訳が帳簿に載る製品では実質的な差が出にくい
4人以上 役務ごとに担当を置く 操作履歴が消せる製品では、事後の追跡が残課題になる

2人の会社が最初に手を付ける先は、残す1本を選ぶことよりも先にマスタ保守の切り離しです。理由は2つあります。ひとつは、3通りの残し方のどれを選んでもこの切り離しは成立するので、選択の順番として先に決まること。もうひとつは、勘定科目と自動仕訳ルールが起票担当の手元にあると、仕訳の見た目を変える経路が残ることです。金額を触らずに科目を差し替えるだけで、月次の表情は変わります。

3人になると危険ペアを0本にできますが、配り方は12通りあり、どれでも0本です。どれを選んでも数の上では同じなので、ここから先は業務量と繁忙期のずれで決めることになります。記帳と出納を同じ月末に寄せると、人は分かれていても時間が足りません。

4人以上では役務ごとに1人を置けます。余剰が出たら、代わりに見るのは相互牽制ではなく引き継ぎのほうです。1役務1人の体制は、その1人が休むと止まります。

表の値は役務を4つ、衝突する組を4本と置いた場合のものです。置き方を変えれば数は動きます。たとえば固定資産の登録や償却計算を5つ目の役務として足し、記帳と衝突するとみなせば、2人で残る本数は増えます。自社の業務をどこで切るかが先にあって、人数の話はその後に来ます。

今すぐやることチェックリスト

  • 最優先オーナーまたは管理者のアカウントが誰のものか確認し、退職者が残っていれば移譲する今月中 / 経理責任者
  • 最優先起票担当の権限から勘定科目・取引先・自動仕訳ルールの編集を外す今月中 / 経理責任者
  • 重要出納(口座からの出金実行と銀行連携の設定)を記帳担当以外へ移す翌月の締めまで / 経理責任者・代表
  • 重要弥生会計なら作業ログの書き出しを定例化し、保存先を会計データと別にする翌月の締めまで / 経理担当
  • 確認優良な電子帳簿の届出を出しているなら、検索要件の充足形が今の運用と合っているか見直す次の申告期限まで / 経理担当・顧問税理士

人数別に、着手の順番が入れ替わる

上のリストは共通部分です。経理の人数によって、どこから手を付けると効くかが変わります。

経理が1人の会社では、会計ソフトの中で解ける部分がありません。最初にやることは、出金の実行を経理以外へ移すことです。ネットバンキングの承認者を代表にする、振込データの作成と送信の間に人を挟む、といった経理システムの外側での手当てになります。会計ソフト側では、管理者アカウントを代表が保持し、経理担当には管理者以外の権限を割るところまでです。権限を割っても本人が管理者パスワードを知っていれば意味が薄れるので、パスワードの保管場所も一緒に決めます。

経理が2人なら、マスタ保守の切り離しから始めます。マネーフォワードなら起票担当を一般ではなく取引登録のみ、またはカスタムにする。弥生会計なら[使用できるメニュー]から科目設定を外す。freeeは既定の権限セットで足りなければ上位プランの詳細設定が要るので、プランの確認が先に来ます。そのうえで、残す1本を記帳×承認にするか記帳×出納にするかを決めます。

経理が3人以上になったら、配り方そのものより承認の運用が回るかを見ます。承認者が不在の日に仕訳が滞留すると、月次が遅れて結局は代行承認が常態化します。弥生会計の仕訳承認機能を入れる場合は解除できないので、この滞留を先に見積もることになります。

検索要件をどの形で満たすかは、索引簿とファイル名のどちらを選ぶかで運用の重さが変わります。分岐点は電帳法の検索要件、索引簿とファイル名のどちらを選ぶか|3つの分岐点にまとめています。

権限を細かく割る前に、口座の側を分けたほうが早い場合

  • 経理が1人の会社 — 4本の危険ペアはどう権限を割っても残ります。会計ソフトの設定より、出金の承認を代表が通帳側で持つほうが実効があります。
  • 承認者が経理の外にいない会社 — 承認権限を作っても承認待ちが滞留し、決算書の作成が止まります。弥生会計では未承認仕訳があると作成できない資料があります。
  • 弥生会計で試しに承認機能を入れようとしている場合 — 事業所設定で一度設定すると解除できません。運用が回るかを決めてから入れることになります。
  • 権限を細かく割った結果、全員が管理者パスワードを知っている状態 — 権限の切り分けは、認証情報が共有されていない前提でしか働きません。先に保管場所を決めるほうが順序として早くなります。
  • 優良な電子帳簿の届出を出していない会社 — 加算税の軽減も控除の上乗せも受けていない段階です。要件の充足を急ぐより、日々の記帳が締めに間に合っているかを先に見ることになります。

アクセスログがあれば電帳法の要件は足りるのか

アクセスログを取っていれば優良な電子帳簿の要件は満たせますか?

別の要件です。規則が求めているのは帳簿データの訂正・削除をした事実と内容を確認できることで、誰がログインして何の画面を開いたかの記録ではありません。アクセスログは社内の統制に効きますが、要件の充足はソフトの機能側で判定されます。

経理が1人なので承認を兼ねています。まずいでしょうか?

1人の体制では記帳×承認、記帳×出納、マスタ保守×記帳、承認×出納の4本がすべて兼務になります。会計ソフトの権限設定でこれを解く方法はありません。出金の実行者を経理の外に置く、通帳と明細を経理以外が定期的に見る、といった経理システムの外側での手当てに移ることになります。

優良な電子帳簿の要件そのものは、兼務があっても満たせます。要件は帳簿データの履歴と検索機能について書かれていて、社内の職務分離を求めてはいないからです。加算税の軽減が消えるのは隠蔽・仮装があった場合で、兼務それ自体ではありません。制度の充足と社内統制は、別々に判断することになります。

顧問税理士に渡す権限はどれが適切ですか?

マネーフォワード クラウド会計には会計士・税理士向けとして「監査」が用意されています。ただしインポート/エクスポートは△で残るため、帳簿データの持ち出しまでは閉じません。持ち出しの可否を管理したい場合は、権限ではなく契約側で取り決める形になります。

気をつける先はもう1つあって、オーナー権限を事務所側のアカウントに置いたままにしないことです。マネーフォワードのオーナーは各事業者に1つで、移譲には相手のメール認証とログインが要ります。顧問契約を切り替える場面で、この1手が残っていると引き継ぎが止まります。弥生会計では事業所データごとにユーザー管理が独立しているため、データを渡す単位で権限も一緒に動く点が違います。

製品そのものの選び直しを含めて検討する段階なら、会計事務所が連携要件として何を見ているかが判断材料になります。会計事務所が顧問先に勧めるクラウド会計|事務所側の連携要件で決まる3点で整理しています。

権限別の機能一覧を公式サイトで開いて自社の割り当てと突き合わせる →

【記事情報】

・監修: 本記事は税理士等の有資格者による監修を受けていません。

・免責事項: 本記事は公開時点の公表情報に基づいています。優良な電子帳簿の要件充足や届出の要否といった個別の判断は、管轄税務署または担当の税理士へご確認ください。各製品の権限名・画面名・プラン別の可否は改定されることがあるため、各公式ヘルプの最新版をご確認ください。

・出典: 条文は e-Gov 法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」第5条第5項第1号。製品の権限区分と画面名は freee・マネーフォワード・弥生の各公式ヘルプ(本文各所に記載)。いずれも2026年9月12日に確認しました。

・記述の粒度がそろっていない箇所について: freeeのヘルプセンターは直接閲覧ができないため、freeeの節は公式ヘルプの記事名を挙げた参照にとどめ、画面の遷移手順は書いていません。マネーフォワードと弥生はヘルプ本文を参照しているため、記述が細かくなっています。

・職務分離の表の条件: 分けたい役務を記帳・承認・マスタ保守・出納の4つ、衝突する組を4本と置いた場合の値です。役務や衝突の置き方を変えれば結果は変わります。

掲載順は編集部の評価順に基づいており、報酬額を根拠に順位を動かしていません。料金は税別・変動する前提で、各社公式ページの調査日を併記しています。

比較ハブへ記事情報へ